2017年2月18日土曜日

音楽理論的に正しい料理教室(7)おでん

 自分に厳しく。
 それはなかなか出来ることではないから、立派なことです。
 しかし、ぬるま湯に浸かり続けるからこその境地というものも、世の中にはあります。こたつの中から数ヶ月トイレ以外に出ない男のような境地。料理だと、おでんです。


 先に申し上げると、おでんのこつは、一切煮立たせないことです。ずーっと、ぬるま湯。親からの仕送りをパチンコに使っちゃうような、そういう、もう誰が見てもふにゃっふにゃの、すっかりダメ人間になっているくらいが、美味しいおでんです。煮立たせたとたんに出汁が濁ります。ぬるま湯だと、澄んだ出汁が保てます。ダメ人間だけど心だけはピュア。そういうおでんを目指してください。
 
 ガスではなくIHが便利でしょう。厳しい海に生を受けた昆布をオルゲルプンクトで思いっきり甘やかして下さい。甘やかせば甘やかすほど、でろでろになります。熱燗も良いですが、ここは安いバーボンの水割りなどを添えて、自分もでろでろになってください。くれぐれも、戦わなきゃいけないときに、こんなものを食べてはいけません。
 先日、近所で友人と飲みました。そのときに食べたおでんが美味しかったこと。特に昆布が、人間でもここまでだらしないやつは見たことないってくらい、ふにゃふにゃでした。そんなものを食べながら飲んでると、不意に、いろいろなことを思い出します。例えば、僕の父がお師匠さんについて浪曲をやっていたこと、とか、僕が学生時代に受けた数少ないピアノのレッスンが、シューベルトの「楽興の時」だったこと、とか。
 ということで、これが昨日の晩御飯。食べたとたんに睡魔に襲われました。