いままで勉強してきたまとめとして、麻婆豆腐に挑戦しましょう。
普段なにげなく食べている麻婆豆腐ですが、これはTSDの機能が最大限に拡張された複雑な料理です。各素材の関係と作り方の時間設計は、中心軸システムとフィボナッチ数列が役に立ちます。
◇トニック軸
油(ド)
スパイス群1/輪切りの赤唐辛子、ホールの花椒(ファ♯)
豆腐…さいの目に切り、水を切っておく(ラ)
豚ひき肉(ミ♭)
◇ドミナント軸
豆板醤(ソ)
香味野菜/長ネギ…みじん切り、しょうが・にんにく…チューブも可(レ♭)
甜麺醤(シ♭)
スパイス群2/花椒の粉、八角、辣油(ミ)
◇サブドミナント軸
水(ファ)
片栗粉(シ)
醤油、料理酒(レ)
鶏がらスープの素、砂糖(ラ♭)
麻婆豆腐の主役は豆腐と豚ひき肉に見えますが、中華料理の場合、トニックの一次軸にあたるものは油(ド)とスパイス(ファ♯)です。まず赤唐辛子と花椒を油で熱し、8小節目まで弱火で序奏とします。ここで香りが立ったら、ドミナントの一次軸である豆板醤(ソ)と香味野菜(レ♭)を入れ、13小節使って、辛味で目がしょぼしょぼするまで香りを立たせます。
21小節目になったら火力をクレッシェンドし、豆腐(ラ)と豚ひき肉(ミ♭)のトニックの二次軸を入れ、炒めます。ここで魚介や野菜や春雨などの素材を二次軸に選べば、また違う料理になります。中華は理論がしっかりしているので、バリエーションの幅が非常に広いです。
34小節目の黄金分割点でサブドミナント軸の水(ファ)、鶏がらスープの素と砂糖(ラ♭)、醤油と料理酒(レ)を入れ、ドミナント軸の八角(ミ)と甜麺醤(シ♭)を入れます。ちなみに、水と油はトルコ料理では増4度の関係ですが、中華の場合は半音下がって完全4度です。
しばらく煮立たせ、残り8小節のところで急激にディミヌエンドし、水に溶いた片栗粉(シ)をまわし入れ、花椒の粉と辣油(ミ)を振って辛味を調節し、55小節目で出来上がりです。
自分でも何を書いているのかだんだん良くわからなくなってきましたが、どんなに理論が複雑でも、食べたら美味しい。そういう一皿を目指してがんばりましょう。ちなみに、このレシピで作ると四川に行って食べるくらい辛くなります。食事中のBGMには、ピリリと刺激の強いバルトークの『中国の不思議な役人』を、ぜひどうぞ。(終)