とある打ち上げで料理の話になりました。
僕の料理好きは僕の仲間内ではみんなの知るところ。とある若い女の子が「わたし料理できないんです」と言っておりました。普段は適当にめんつゆばっかり使っているから、今度教えてください、と。しかしめんつゆが一本もあれば、たいていのことは何でもできるのです。それを今日は、彼女に教えてあげたいと思います。
料理をニガテと自覚している人にほぼ共通して言えることは、みんな、頭からちゃんと作ろうとしすぎていることです。楽譜にフォルテが書いてあったら何デシベルで、ピアノなら何デシベルで。そういうふうにレシピを追っちゃう。みなさんそんなふうに弾いてますか。弾かないでしょう。だからここをまずテキトーにすることが大事なのです。
めんつゆのように単純な調味料は、材料を通るだけで味が変わるので、これをまず体に叩き込みましょう。同じ「ド・ミ・ソ」でも、ハ長調のI度とヘ長調のV度とト長調のIV度とホ短調のVI度とホ長調の準VI度では意味合いも風味も違いますね。レシピをまるまる暗譜するのではなく、素材の質感をソルフェージュできるようなれば、きっと料理が上手くなります。
大根でサラダを作りました。
レタスを敷いた皿の上に、皮を剥いて薄く切った大根を乗せただけです。これにめんつゆをかければよろしい。それだけだと淋しいので、生ハムをちぎって乗せて、さらに水菜の根っこのほうにある若い葉っぱをちぎって乗せれば、これで実際店に出せます。料理の盛り付けは髪の毛の盛り方同様に大事です。どんな料理もそれだけでそれっぽくなります。
大根を薄く切る自信がなければスライサーで、皮を剥くのが面倒ならきれいに洗ってそのまま殺っておしまいなさい。ただ、レタスと薄く切った大根は水にさらすこと。生で食べる野菜は水にさらすこと。人様に出す際には水気をふきんで軽く取ること。ここは要点なので、覚えておきましょう。
めんつゆだけが淋しければ、ごま油を混ぜれば中華風に、オリーブオイルと酢を混ぜてチューブのわさびでも溶かしておけば、創作料理居酒屋風(または速水もこみち風)になります。