美空ひばりという不世出の国民的歌手への尊敬の念はもちろんですが、舞台裏で彼女を支えた大衆音楽作家の作品と、その個性に注目します。
大衆作家だからこそ残し得たもの、もはや誰にも書けないもの、それでいて今なお新鮮なもの…
いずれも素晴らしい仕事ばかりのこれらを、昭和というひとつの時代の記憶として懷かしむに留まらず、芸術音楽の歌手たちが「日本歌曲」として歌い継ぐことはできないものか。その再定義の試みを、皆様とともに分かち合いたいと思います。
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◎クラシック風アレンジで聴く 美空ひばり
日時 2020年1月25日(土)
13時30分開演(12時開場)
会場 アート・カフェ・フレンズ
http://www.artcafefriends.jp/
(JR恵比寿駅西口下車徒歩2分)
チャージ 前売¥3,500 当日¥4,000
※お飲み物代500円を別途申し受けます。
曲目
東京キッド(万城目正)
リンゴ追分(米山正夫)
みだれ髪(船村徹)
悲しき口笛(万城目正)
車屋さん(米山正夫)
日和下駄(米山正夫)
花笠道中(米山正夫)
哀愁波止場(船村徹)
悲しい酒(古賀政男)
津軽のふるさと(米山正夫)
※新しい編曲の追加を計画しています。
お問い合わせ
卍プロジェクト 03-6421-1206
スタジオ・フレッシェ studiofroesche[at]gmail.com
予約は下の「今すぐ購入」ボタンから
※チケットの発送はございません。受付でお名前をお申し出ください。
※当日はお飲み物代500円を別途ご用意ください。
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◇ごあいさつ 西澤健一
美空ひばり。52歳、昭和の太陽没す―
終わりのないようにすら感じられた昭和という時代が、風に吹かれる砂のように、どこかへと消え去ってしまった。そんな平成元年の喪失感を僕もよく覚えています。太陽を失った我々は、その寂しさに耐えかねて今なお彼女をよく思い出します。ついには、彼女の声を解析したAIが新曲を披露するという、そんなニュースを耳にする昨今です。
この企画もまた、彼女の歌を懐かしむ心から出発しました。
クラシック音楽とその発声法を学んできた歌手たちが円滑に歌の世界へと入って行けるように、クラシック音楽の技法を用いたピアノ伴奏を用意する。僕の意図はその一点のみでした。「クラシック風アレンジ」と銘打ちましたが、本当は「クラシック音楽の歌手のためのアレンジ」と言うほうが、より正確かもしれません。僕はただ純粋に、旋律線とその背後の和声とを観察することに徹したのです。
この作業のなかで、美空ひばりその人もさることながら、あの時代の大衆音楽の作曲家たちが遺したものの大きさにも改めて思い至りました。米山正夫、万城目正、船村徹、古賀政男。みなそれぞれに強い個性を持っていて、それぞれに複雑で、豊かなのです。演歌・歌謡曲という呼称の内側には、どこまでも本格的な音楽があったのです。
あれから30年が経ち、また新しい時代がやってきました。往時の記憶のない若い世代も増えてきました。記憶ある最後のひとりが逝くときに忘れ去られてしまうだろうにはあまりに惜しいこれらの歌々を、なんとか、芸術の歌手たちによって歌い継ぐことはできないだろうか。ただ懐かしんで終わるのではなく、これからの時代の新しい「歌曲」のレパートリーとして遺すことはできないだろうか…
初めて皆様に披露してからの2年間。美空ひばりという存在が想定されたものゆえにたいへん技巧的な「歌曲」となったこれらの編曲を、新宮さんは大切に歌い続けてくれました。僕も少しは上手くなりました。再び、皆様の前で演奏できるのを楽しみにしています。
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動画=前回2016年のリハーサル風景から「津軽のふるさと」(米山正夫/詞・曲)