今後のいくつかの予定をご紹介します。
3月20日「アニヴェルゼル~ハーモニカ・コンサート~」では、「おんな酒場放浪記」でもお馴染みのハーモニカ奏者、寺澤ひろみさんと共演します。この公演には『蔦の門 ハーモニカのための』『クロマチック・ハーモニカとピアノのための小ソナタ』という2つの新作を用意しました。とりわけ『蔦の門』…これは複音ハーモニカ独奏のための作品ですが…は、ちょっぴり誇張が許されるなら、複音ハーモニカという分野のために重要なレパートリーを提供できたと思います。先日、はじめてのリハーサルで、寺澤さんが熱を込めてこの作品を語ってくれたことで、僕も自信が持てました。近くて遠い楽器、ハーモニカの印象が刷新されると思います。
4月17日「柴田高明マンドリン・リサイタル」には『4つの前奏曲』という新作を提供しました。これは、向こう3年間で計6人の作曲家に委嘱し、毎回古典とともにソロ作品のみでプログラミングするという、たいへん頭の下がる思いのする企画の一環。今回がその第一回目で、僕は露払い役を仰せつかりました。今回は田口和行氏による新作も発表されます。柴田さんとは2012年に『マンドリンと弦楽三重奏のためのコンチェルティーノ』を書いて以来、これが2作品目。僕の楽器の理解度も9年前よりいくらか上がったと思いますが、マンドリンの地位向上に挺身する柴田さんの熱意に応えるべく、頑張りました。
4月30日「米津真浩・安嶋健太郎ピアノデュオ・リサイタル」では、2018年、仙台ピアノデュオの会のために書き下ろした『祝典ソナタ』が取り上げられます。まだまだ曲に恵まれていない2台ピアノという分野のレパートリーとなるよう願って書いた作品なので、早くも再演されることが素直に嬉しいです。アクの強い(と形容してすまぬ)実力者2人によってこの作品がどのように違う表情を見せるのか、僕も楽しみにしています。
それから、3月8日「鈴木一成バスーン・リサイタル」…ここでこの演奏会に触れる理由は、まだちょっと大っぴらにはできませんが、ご来場くだされば、きっと分かります。
それぞれの演奏会の詳細については、下記をご覧ください。
このつらい現世を少しばかり忘れさせてくれる力が音楽には確かにあります。が、それには作家が現実の世界を呼吸していなければならない。どうして慰めの言葉を知らずして人を慰められましょうか。このような困難な時代においてもなお新作を書けること、旧作が再演されること。それはたいへん恵まれたことに違いありません。その幸福を、僕は僕なりの方法で社会に還元すべく、今後も精進していきたいと思います。
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- 西澤健一/蔦の門 ハーモニカのための(初演)
- 西澤健一/ハーモニカとピアノのための小ソナタ(初演)ほか
- 西澤健一(1978-) 4つの前奏曲(新作初演)
- ・田口和行(1982-) 蒼穹(新作初演)ほか
- 西澤健一/祝典ソナタ ほか