2021年2月7日日曜日

『オーバード』の評 Das Orchesterに掲載

 ホフマイスター社から出版されたオーボエ・ダモーレ/ファゴット/イングリッシュ・ホルンのための『オーバード』の評が、ドイツの音楽誌『Das Orchester』に掲載されました。楽譜はオーボエ・ダモーレ版ファゴット版イングリッシュ・ホルン版それぞれ、日本ダブルリード株式会社のオンラインショップでお求めになれます。

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 恋人たちの夜明けの別れ、トルバドゥールの歌。演奏家としてここに留まりたい。流れるようなカンティレーネで、何度も繰り返され、常に軽やかに変化し、美しい響きに包まれ、暖かさと優雅さに満ちている。

 作曲家の西澤健一は1978年東京に生まれる。15歳でピアノを始め、同時に独学で作曲を始める。音楽大学には1年しか在学していない。2013年に初演された交響曲と2017年に初演されたオペラのほかに、主に室内楽、独奏曲、ピアノ伴奏の器楽曲が100曲以上あり、多くの作品で日本の作曲賞を受賞している。

 この『オーバード』はホフマイスター社から出版された。サン=サーンスのオーボエ・ソナタにインスピレーションを得て、最初はオーボエ・ダモーレとピアノのために作られた。更にファゴット、イングリッシュ・ホルンのために編曲され、それぞれ楽器に合わせて嬰ヘ長調、ヘ長調、ニ長調となっている。

 オーバード…朝のセレナーデ…は、作曲者が書いているように、初日の出の燃えるような赤と紫色の空を映している。西澤はこの曲を2018年のニューイヤー・コンサートのために作曲し、自らピアノパートを務めた。

 管のパートは心地よい中間音域を緩やかに漂い、大きなスラーのメロディが印象的なピアノの響きに見事に支えられ、驚くようなハーモニーのなかに注がれ、二つの楽器が互いに溶け合っていく。

 上質な紙を使用し、音符の表記は読みやすく、メロディパートが見開きに収まっているおかげで譜めくりが不要なため、演奏していると楽しさが増してくる。

 作曲者による序文で、彼自身のことをいろいろと知ることができることもありがたい。出版社のサイトではピアノスコアの1ページ目が見られる。

 難易度としては、出版社は中級/上級としているが、これは「ヴィルトゥオーゾではないが要求が多い」と書き換えることができるだろう。

 5分ぎりぎりの長さで、短い瞑想のような印象を与える。瞑想の形式の中で、この作品はダブルリード文学を演じている。コンサートのプログラムの中でメインに加える作品として、または静かなアンコール作品として、あるいは音楽以外の催しで演奏する作品としても大変適している。(評者=アネッタ・ヴィンカー)