「『さなぎ』は、一匹の芋虫が蝶へと変態していく様を描く音楽的比喩ですが、この物語には『霊的に変化すること』というもう一つのメッセージが含まれています(モリス氏)」
3つの楽章は「芋虫」「さなぎの中で」「蝶」と名付けられており、イングリッシュ・ホルンによって冒頭に提示されるテーマは、ほぼそのままの形を保ちながら全曲を通し現れるのだが、その景色はそれぞれに異なっている。スウィングのリズムでのっそり這う「芋虫」と、ひらひらと分散和音に飛ぶ「蝶」は同じ個体=旋律である、という趣向だ。
ただし、単に蝶の変態を音楽で表現したというわけではないようだ。この作品の眼目、孵化と羽化とに挟まれた中間楽章「さなぎの中で」を、作曲者はイエスの死と復活になぞらえて説明している。「神の偉大な賜物を通して経験する霊的な再生(モリス氏)」。夜明け前がいちばん暗いというような、これは蝶の生涯を借りた宗教的寓話なのだろう。楽しく、またロマンティックな佳品である。(「ダブルリードの夕べ」於・トッパンホール)